「褒める」ことの是非:相手の成長を考えた「感謝」と「叱り」

褒めることの是非

皆さんは大切な人のことを褒めていますか?

よく「自分は褒められて育つ人間だ」と言う人がいます。
体罰やパワハラが問題としてあがる中で、叱って伸ばす育成方法は通用しなくなっているのも事実です。
その一方で「褒める」育成が本当に正しいのかと言われると、そこにも疑問を感じます。

今回は褒めることの是非について考察していきます。

褒めることは依存させること

7つの習慣(R)実践会で、参加者から褒めることについて以下のような意見が出されました。

  • 褒めることは評価ではないか?
  • 上から目線ではないか?

スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』には、褒めることについての記載はありません。
褒めることを「評価」と捉えると、『7つの習慣』の「自叙伝的反応1」に当てはまり、避けるべき行為にもなり得ます。

岸見一郎さん・古賀史健さんの『幸せになる勇気』では、褒める行為は他者を依存の状態に追いやってしまうとし、アドラー心理学では否定的な見解を述べています。

ほめられることでしか幸せを実感できない人は、人生の最後の瞬間まで「もっとほめられること」を求めます。その人は「依存」の地位に置かれたまま、永遠に求め続ける生を、永遠に満たされることない生を送ることになるのです。

『幸せになる勇気』

両書とも、褒めることには肯定的ではなさそうです。

他人からではなく、自ら褒めることが大切

それでは、「自分は褒められて育つ人間だ」という人には、どのように対応すればよいでしょうか。
『7つの習慣』では、評価を与えることについては否定的ですが、以下のようにも述べています。

本人が本人を評価するほうが、他人が本人を評価するよりもずっと人間性を尊重しているし、本人も精神的に成長する。信頼関係さえできていれば、自分で評価するほうがはるかに正確でもある。

『7つの習慣』

また、『幸せになる勇気』でも他人から褒められるのではなく、「自らの意志で、自らを承認するしかない」と述べています。

他人からの評価として褒められるのではなく、自分で自分の行為を褒めることが推奨されています。

感謝を伝える

では、他者が自らを褒めることを促すために、私たちには何ができるでしょうか。
スティーブン・R・コヴィー博士の『エッセンシャル・リーダーシップ』には、相手の行為ではなく、自分がそれをどう感じたかを伝えるのが良いと書かれてあります。

一対一の状況でフィードバックを与えるもっともよい方法は、相手についてではなく自分自身のことについて話すことだ。相手を非難したり、評価したり、レッテルを貼るのではなく、その状況について自分が感じていること、心配していること、認識していることについて話す。

『エッセンシャル・リーダーシップ』

つまり、「You」メッセージではなく「I」メッセージを使うということです。

そして、これらを元に実践会の参加者や他の実践会ファシリテーターと議論を重ねたところ、相手を褒めるのではなく「感謝する」ことが良いのではないかという結論に至りました。

私たちが評価したり褒めたりするのではなく、ただ相手の行為に感謝することで、相手が自分自身を褒めることにつながっていくのです。

ネガティブフィードバックもOK

叱って伸ばすことは通用しなくなっていると冒頭で書きましたが、叱ってはいけないわけではありません。

昨今の事情から、家族以外の人から叱られた経験のある人は少なくなってきています。
企業もハラスメントに敏感になりすぎて、ホワイトすぎて辞めるという若者さえ出てきています。

相手の成長を考えれば、若いうちに間違いを正してあげることは、その人の今後の人生にとって大きな糧となります。
パワハラで訴えられるのではないかとビクつき、指導すべき相手を甘やかすことは、ただの保身でしかありません。
相手の成長より、自分の立場のことしか考えていない現れです。

相手の成長を考え、愛情を持って「駄目なものはダメ」と伝えることは大切なことです。
私も部下を叱った時に「こんな風に叱ってくれる人はいなかった」と感謝されたこともあります。
間違いが正されずに好き勝手やれてきた人が他人の上に立つことほど恐ろしいものはありません。
叱ってくれる人が周囲にいないと、私たちは簡単に裸の王様になってしまうのです。

ただし、叱る際に「感情的」になってはいけません。
それは怒りの発散であって、相手のことを想った行為ではなく、自分の感情をスッキリさせるために行われるものだからです。

叱る際には、事実確認をしっかり行い、相手の言い分も聴いた上で、どうすればよいのかを具体的に論理的に伝えましょう。

効果的なフィードバックの仕方については、以下の記事もご参照ください。

サンドイッチ・フィードバック 自分を知る、他者を照らす:効果的なフィードバックの秘訣

新任のチームリーダーやマネージャには、部下をどう扱ってよいかわからないという方も多くいます。
私も初めてマネージャになったとき、何をしたら良いのだろうと手探り状態でした。
当然、失敗も多く経験し、今の御時世なら一発アウトな発言や対応から、部下の信頼を失うことも多々ありました。

それから10年以上組織マネジメントを経験し、また『7つの習慣』をはじめ、心理学NLPやアドラー心理学、コーチングを学ぶ中で、組織の中で上司や部下とどのようにコミュニケーションを取れば良いのかを探求してきました。
そのお陰か、課題を持った2部署の立て直しと後任育成を成し、独立に至っています。

新任の方が、私のように苦労しないように、部下と良い関係を築いて早く結果を出せるように、私の経験をお伝えできればと考えています。
組織コンサルティングと新任の方へのコーチングを組み合わせた共創型コンサルティングで、あなたの組織のお役に立てればと思います。


脚注

  1. 自分の視点から「評価する」「探る」「助言する」「解釈する」反応的行為で、相手を理解することを妨げるもの。 ↩︎

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