エグゼクティブコーチングの概要については以下の記事でお伝えしました。
エグゼクティブ・コーチングとは | なぜ必要?内容や効果、料金は?今回はその中からエグゼクティブコーチングの効果について、利点やプロセス、課題などを含めてお伝えしていきます。
エグゼクティブコーチングの定義
エグゼクティブ・コーチングは、企業の経営者や管理職が自身のリーダーシップスキルを向上させ、組織全体のパフォーマンスを最大化することを目的としたコーチングです。
コーチはクライアントである経営者や管理職と1対1で協力しあい、個々のリーダーシップや経営課題に取り組みます。
コーチはクライアントの潜在的可能性を引き出し、改善が必要な点を特定し、具体的なアクションプランを共に策定していきます。
このプロセスを通して、クライアントは自己認識を深め、効果的な意志決定力や戦略的思考を養います。
また、管掌組織を成長させるために、人間関係や感情知能(EQ)の向上にも焦点を当て、組織内の信頼関係を強化し、チームのモチベーションと生産性の向上も目指します。
IT企業の経営者にとって、エグゼクティブコーチングは、急速に変化する技術環境や競争の激しい市場での成功を支える重要な手段となり得ます。
また、事業と開発のコミュニケーションや関係向上も対処すべき重要な課題です。
コミュニケーションが苦手なエンジニアと、技術的なことが分からない事業側の橋渡しができる人材の育成は、IT企業にとって常に課題となっています。
エグゼクティブコーチングを通して得られる洞察とスキルは、企業の成長と持続可能な競争優位を実現するための鍵となるでしょう。
エグゼクティブコーチングの利点
エグゼクティブコーチングは、経営者や上級管理職が個人および組織の目標を達成するための強力なサポートとなります。
特にIT企業の経営者にとって、エグゼクティブコーチングは以下のような多くの利点があります。
リーダーシップスキルの向上
エグゼクティブコーチングは、経営者がリーダーシップスキルを高めるための具体的な方法を探求します。
意思決定能力の強化や戦略的思考の向上など、リーダーとして求められるものは多岐にわたります。
また、広い視野と高い視座を持ち、俯瞰的に事業を観る能力も必要です。
コーチングを通して、経営者は複雑な問題に対処し、効果的な戦略を立てる能力を向上させることができます。
感情知能の向上
感情知能(EQ)とは、自身や他者の感情を知覚し、適切に対応する能力のことです。
感情的知性(EQまたはEI)とは、自分自身の感情的な反応を識別し、表現して管理する能力を指し、他者の伝える感情を知覚し、評価して対応する能力も含まれます。
感情的知性がリーダーにとって重要な理由 | Lucid
組織を管理する経営者にとって感情知能は欠かせない要素です。
コーチからのフィードバックを通して、経営者が自己認識を深め、ある感情をなぜ抱いたのかを探求することで適切に管理できるようになります。
これにより、職場のコミュニケーションが円滑になり、チームの協力が促進されます。
生産性とパフォーマンスの向上
エグゼクティブコーチングは、経営者がより効果的に目標設定と達成に向けて行動することをサポートします。
コーチングでは目標の先にある目的を常に意識します。
こうすることで、不測の事態が発生しても軌道修正が容易になります。
経営者は具体的な行動計画とタイムマネジメントの技術を学ぶことで、自身の生産性を最大化し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
対立解決力の向上
職場での対立は避けられないものです。
特に経営者ともなれば、事業と開発の間で、多くの利害関係に挟まれながらの判断を迫られます。
エグゼクティブコーチングでは経営者が気づいていない思考パターンや思い込みなどを客観視できるようコーチがサポートを行うため、対立していると思い込んでいた問題に対処できるようになります。
これにより、ポジティブで協力的な職場環境が促進され、組織の健全性が保たれます。
長期的なビジョンの確立
エグゼクティブコーチングは、経営者が長期的な視野でビジネスを考えることをサポートします。
漠然と考えていたことをコーチの質問により言語化することで、焦点が定まったビジョンへと洗練されていきます。
戦略的な目標設定とそれに向けた具体的なステップを明確にすることで、企業の持続可能な成長と競争優位性を確保することができます。
メンタル面の予防
ビジネスパーソンのうつ病の主な要因は仕事のストレスです。
IT業界は競争の激しさやサービスの維持などで特に高いプレッシャーとストレスが伴います。
悩ましい問題を長く保持せず、解決可能な課題に落とし込むことがストレスを貯めないためにできることの1つです。
定期的にコーチングを受けることで、経営者は頭の中を整理でき、悩みを行動できる課題へと変えることができます。
また、仕事とプライベートを両立することも大事です。
気づいている人は案外少ないのですが、家族の問題は仕事のパフォーマンスを低下させます。
必要であれば、時として仕事の話から離れ、家族問題について話すこともエグゼクティブコーチングの大切な役割になっています。
これにより、経営者は健康で持続可能な働き方を維持できます。
エグゼクティブコーチングの効果
国際コーチ連盟 (ICF) の報告書によると、エグゼクティブコーチング導入のROI(投資効果率)は下記のとおりです。
個人のパフォーマンスが70%向上
- 目標達成
- コミュニケーション力向上
- 満足度向上
チームパフォーマンスが50%向上
- より良い会話
- 協力関係の改善
- 仕事のパフォーマンス向上
組織パフォーマンスが48%改善
- 売上の増加
- 退職数の減少
- 顧客満足度の向上
参考:The ROI of Executive Coaching | American University, Washington, DC
エグゼクティブコーチングは、数値で見ても多くのメリットがありますが、定性的な面として以下のようなクライアントさまからの評価があります。
- 自分一人では考えつかなかった行動計画が立てられた。
- 部下に目標を伝えただけで、その進捗をちゃんと管理できていなかったことに気づけた。
- 先延ばしにしていたことを、ちゃんとやっていかないといけないと覚悟が決まった。
- 当たり前すぎて気にも止めなかったことが、実はちゃんとやれていなかったことに気づけた。
- コーチングを部下に受けさせた方が良いと感じた。
など、多くの効果を感じていただいています。
エグゼクティブコーチングのプロセス
エグゼクティブコーチングのプロセスは、各社各コーチによって様々です。
ここでは典型的なプロセスについて記載します。
まず、クライアントの現状を把握するための初期評価を行います。
これは、自己評価、360度評価、心理的アセスメントなどを通じて行われます。
初期評価に基づき、クライアントとコーチが協力して具体的なゴールを設定します。
経営陣、管理職がコーチングの対象の場合、会社からテーマが課せられる場合もあります。
目標と現状のギャップを明らかにし、それを埋めるための行動計画を作成します。
これには、学習や行動の変化を促すためのアクションが含まれます。
中には、これまで避けてきたり後回しにしていたことも含まれてくるでしょう。
クライアントは計画に従って行動を開始します。
コーチは定期的なセッションを通じて進捗をモニタリングし、必要なサポートを提供します。
コーチはクライアントの思考や行動に対する第3者視点でのフィードバックを行います。
時に内省を促し、時にチャレンジングな質問をします。
共に課題に対峙し、共に成果を喜びます。
一定期間を経た時点で、進捗と目標達成度を確認します。
必要に応じて行動計画を調整します。
目標が80%くらい達成された際、新たな目標を設定する場合があります。
これにより、クライアントは継続的に成長し続けることができます。
エグゼクティブコーチングは一時的なプロセスではなく、継続的なサポートにより成果を最大化します。
セッションを重ねるごとに、コーチはクライアントとその事業や人間関係などを理解し、より深いコーチングができるようになっていきます。
適切なコーチの選択
エグゼクティブコーチングの効果を最大化するためには、適切なコーチを選ぶことが非常に重要です。
特にIT企業のコーチングには開発と事業の両面を理解できるコーチでないと、話を分かってもらえなかったり表面的な問題解決に終わってしまうことがあります。
以下に、適切なエグゼクティブコーチを選択する際に考慮すべき点をまとめます。
資格と専門知識
エグゼクティブコーチが保有する資格は、そのコーチの専門性と信頼性を示します。
例えば、国際コーチ連盟 (ICF) などのコーチ認定機関からの資格の有無を確認しましょう。
これらの機関から認定を受けたコーチングスクールで学んでいるかも判断材料となります。
また、コーチは、クライアントの業界や特定のビジネス課題に対する深い知識と経験を持っていることが望ましいです。
特にIT企業の経営者には、その特殊性から技術的な背景や業界特有の課題に精通したコーチが理想的です。
コーチ自身のブログや記事、書籍などがあれば参考にしましょう。
経験と実績
コーチングの実務経験が豊富なコーチは、さまざまな状況に対応する能力を持っています。
特に、上級管理職や経営者のコーチング経験が豊富なコーチを選びましょう。
また、クライアントの成功事例やセッションの感想などを確認することで、コーチの実績を評価できます。
これらを通じて、コーチがどのような成果を達成してきたかを知ることができます。
コーチングスタイルとアプローチ
コーチとクライアントの相性は非常に重要です。
体験セッションや面談を通じて、コーチのスタイルが自分に合っているかを確認しましょう。
コーチとクライアントが信頼関係を築けるかどうかが、コーチングの成果に大きく影響します。
コーチングのアプローチは、解決志向、認知行動療法、リーダーシップ開発など、コーチによってさまざまです。
自分のニーズや目標に最も適したアプローチを提供できるコーチを選ぶことも重要です。
コミュニケーションスキル
優れたコーチは、クライアントの話をよく聞き、理解する能力を持っています。
クライアントと同じ世界を見ながら対話を行うには、まずクライアントのことを理解する必要があるからです。
話半分にアドバイスを行うようなコーチは、コーチの世界観で問題を解決しようとしています。
コーチの傾聴のスキルは、クライアントへの効果的なフィードバックとサポートの基盤となります。
継続的なプロフェッショナル・デベロップメント
優れたコーチは、自身のスキルと知識を継続的に更新し、最新のコーチング手法やビジネスのトレンドに対応できるよう努めています。
継続教育やトレーニングプログラムに積極的に参加しているかを確認しましょう。
課題と考慮点
エグゼクティブコーチングを受けることには多くのメリットが存在しますが、そのプロセスにはいくつかの課題と考慮すべき点も存在します。
これらを理解し適切に対応することで、コーチングの効果を最大限に引き出すことができます。
抵抗感や不安感
一部の経営者は、コーチングを受けることに対して抵抗感を抱くことがあります。
これは、自分の弱点を認めることや、第三者の意見を受け入れることへの不安感から生じる場合があります。
他人に頼ってはいけない、自分で頑張らなきゃと思うのは日本人の気質から来るものなのでしかたないかも知れません。
また、経営に関する機密情報を扱う点でも不安を覚えるでしょう。
コーチングはクライアントの意思を最大限尊重し、必要とされていないアドバイスを行うことはありません。
また、守秘義務もあるため、セッション内で話された内容やクライアントの人となりを第三者に話すこともありません。
時間の確保
経営者は多忙であり、コーチングセッションのための時間を確保することが難しい場合があります。
実際、多くのクライアントがセッションの予約を頻繁に変更されます。
コーチを選ぶ際は、セッションの予約の変更がどれくらい柔軟にできるか確認をしましょう。
ただ、コーチングは『7つの習慣』で言うところの第II領域にあたる活動です。
重要だけれども緊急なことではないため、優先順位を下げられやすくあります。
しかし、第II領域の活動の積み重ねが、緊急で対処しなければならない出来事を減らす鍵でもあります。
無理のない範囲で、できる限りセッションの時間は確保しましょう。
利益相反
コーチが同じ組織内の他のメンバーとも関わっている場合、利益相反が生じる可能性があります。
コーチはセッション内で話された内容を会社や上司に報告することはありません。
同様に他のメンバーのことをセッション内で話すこともありません。
たとえ関係者の認識や意思がずれていたとしても、それを解消するのはクライアントであり、コーチが説得や誘導をおこなうことはありません。
異なる見方があることを示し、それにどう対処していくのか一緒に探求します。
組織文化の影響
組織全体の文化がコーチングに対して否定的である場合、個々のコーチングの効果が制限されることがあります。
また、クライアントが主体的に行動を起こさなければ、どんなにコーチングを実施しても変化は起きません。
経営者はコーチングを導入する意図を組織や対象者に伝える必要があります。
同時に、コーチは組織やクライアントに受け入れられるようコミュニケーションを重ねていきます。
成果の測定
コーチングの成果を定量的に測定することが難しい場合があります。
コンサルティングと異なり、コーチングの結果を出すのはクライアント自身になります。
また、クライアントの成長が必要な場合、成果が出るまでに長期間かかる場合があります。
できるだけ明確な目標設定と定期的な評価を通じて、コーチングの効果をモニタリングし、必要に応じてセッション内容などを調整していきます。
結論
エグゼクティブコーチングは、経営者が直面する多くの課題を乗り越え、持続的な成功を成すために必要不可欠になりつつあります。
急速に変化するビジネス環境において、経営者はコーチングを通じて必要なスキルと知識を獲得し、組織をリードしていくことができるでしょう。
エグゼクティブコーチングの導入は、企業の成長と競争力を高めるための必要な投資であると言えます。
特にIT企業においては、事業と開発の関係性など多くの複雑な課題を抱えています。
組織にコーチング文化を導入し、企業の成長を加速させましょう。
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