「責任を引き受ける」とはどういうことでしょうか。
ある企業で二人のマネージャと関わっていた時の話です。
二人にはそれぞれ困った部下がいました。
マネージャA氏の下には、同僚とうまくコミュニケーションが取れず、言い争いになることも多い部下がいました。
マネージャB氏の下には、自信過剰で早く出世させろと評価の度に迫ってくる部下がいました。
「責を負う」と回避に走る
A氏はマネージャになったばかりで経験が浅かったせいか、その部下と対話はしていましたが、「彼が変わらないとどうしようもない」と半ば諦めていました。
上司からマネージャとして対処するよう求められても、チームの状況が悪いのは彼の性格のせいだと返す始末。
私たちは「責任を引き受ける」と考えると、何か不都合やミスが起こった際、すべての責を自分が負わなければならないと感じがちです。
しかし、人は責を負わされると感じると、自己防衛に走ってしまいます。
言い訳を考えたり、他人のせいにしたり、どうしたら自分の責を軽くできるかを優先してしまい、本当に必要な「状況を回復すること」に目が行かなくなってしまいます。
責任を引き受けることの本質は「主体的な対応」
スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』では「責任を引き受けること」を主体性の定義の一つとしています。
主体性は英語ではRespinsibilityであり、Response(反応)を選択するAbility(能力)だと言います。
「責任を引き受けること」が主体性の定義だと考えると、単に「すべての責を負う」ことではなく、「主体的に対応する」ことが責任を引き受けることだと言えそうです。
もう一人のB氏は、自信過剰な部下に対して、ひとつ上の役職の仕事を与えました。
一度やらせてみて、自分に足りていない部分を気づかせたのです。
B氏が巧みだったのは、その足りていない部分をどう補うかを部下と話し合い、その部下の目標設定に組み込みました。
自分の目指すべき方向性と目標設定が一致した部下は、過剰に出世を口にすることは無くなりました。
そして一年ほど経った後に出世を果たし、新任マネージャとしては悪くない評価を得られたようです。
「原因の一端を担う」ことで適切な対処ができる
すべての出来事には「原因」と「結果」が存在します。
責任を転嫁しようとする人は、自分を「結果」側に置き、自分以外の誰かに「原因」を求めます。
しかし、「同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という1」と言われるように、原因が変わらなければ結果も変わりません。
自分ではコントロールできない誰かを原因にしている限り、いつまでも「嫌なあの人、可哀想な私」からは抜け出せないのです。
自分を「原因」側に置いて、初めて「結果」を変えることができます。
これは、自分だけに原因があるという意味ではありません。
自分も原因の一端を担っており、その問題を起こした当事者の一人であると考えることです。
その上で、それにどう対処するかを考え、同じく原因を担っている人たちと解決を考えることです。
B氏の例で言えば、部下にチャレンジングな仕事を与えられていなかったことが原因の一つと考え、部下と一緒に対処する方法を選んだのです。
「責任を引き受ける」とは「原因の一端を担う」ことで、何か不測の事態が発生した場合に、主体的に対処することです。
そのように考えることで、言い訳を考えたり、誰かに責任をなすりつけたりする無駄な時間を排除し、トラブルの収束に時間とエネルギーを使うことができるようになります。
新任のマネージャを育てるには、ある程度の経験が必要になります。
一番良いのは、マネージャ自身が部下を育てながら、自分自身を育てること。
単発の研修では身につかないマネジメントスキルを、コンサルティングとコーチングの両面でサポートいたします。
必要な知識や状況に対処する方法と、それを実行に移す段階でのサポートが、より良い成果に繋がります。
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脚注
- アルバート・アインシュタインの言葉とされるが諸説ある ↩︎
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