【共創のマネジメント】現場知識がないからこそ、たどり着いたマネジメント手法

共創のマネジメント

マネジメントの難しさを感じたことはありませんか?日々の業務で部下を指導する際、何が最善の手法なのか迷う瞬間があるのではないでしょうか。特に、部下が多様なスキルや経験を持つ現代のビジネスシーンでは、一口に「マネジメント」と言ってもその形は千差万別。あなたが今まで試してきた方法が、本当に最適なのか。それとも、新しいアプローチが必要なのか。この記事では、私が楽天での経験を通じて学んだマネジメント手法について、その実践例とともにご紹介します。


あなたは日々の仕事で部下をマネジメントする機会はありますか?

マネジメントには多様な手法が存在します。
それぞれの方法には長所と短所があり、単に他人の手法を模倣するのではなく、自分が実践しやすい方法を、状況やチームの特性に応じて選ぶことが重要です。

今回、私が楽天でのキャリアの最後にたどり着いたマネジメント手法と、それにまつわるエピソードを共有します。
この手法が全ての人や状況に適用できるわけではありませんが、何らかの形で参考にしていただけると最幸です。


パワーゲームの影響

私自身もかつてはパワーゲーム型のマネジメントを行っていました。
楽天市場のシステムを都度設計から構築していた経験から、部下であるエンジニアやプロダクトマネージャーよりも細かい知識がありました。
そのため、状況に応じて的確な指示を出せる一方で、部下の考慮不足を厳しく指摘し細かく指示することが多かったのです。

このような環境下では、成長した部下は「この場に自分の居場所はない」と感じて去っていきました。
また、細かな指摘に疲れた部下も次第に退職していったのです。
それでも、当時は自分のマネジメントスタイルに問題があるとは気づいていませんでした。

マネジメントの転換点

私がマネジメントの改善に本格的に取り組み始めたのは、「7つの習慣・実践会ファシリテーター養成講座」に参加し、『7つの習慣』を深く学んだことがきっかけでした。
その後、心理学NLPとNLPコーチングの研修を受けることで、私のマネジメントスタイルは大きく変わっていきます。

それらを学んだからといって、すぐにうまくいったわけではありませんでした。
楽天のシステムに対する深い知識があるため、課長や部長といった役職にもかかわらず、つい現場に口を出してしまいます。
以前のような強権的なコミュニケーションではなかったものの、役職による言葉の影響力は依然として現場に大きな影響を与えていました。
試行錯誤を繰り返す中、最後に依頼された組織再構築が、私にとって「これだ!」と感じるマネジメント手法へとつながりました。

私が楽天で最後に担当したのは楽天市場開発のQA課でした。
この部門はサービス開発の品質を保証する重要な役割を果たしていました。
しかし、組織としては不十分な評価を受けており、サービス開発の品質保証に対して懸念が持たれていました。
この状況を改善するために組織の再構築が必要とされ、立て直しのために私が配属されました。
私はQAに関する基本的な知識はありましたが、実際に現場を見てみると、その専門性は驚くほどでした。
これまでの「自分が現場をよく知っている」というマネジメントの前提が、この時崩れたのです。

QA課の再構築

幸運なことに、外部から見た印象ほどQA課の状況は厳しくありませんでした。
主な課題は「情報の伝達不足」と「人手不足」で、メンバー個々のスキルに問題はありませんでした。
そこで、私は現場のマネージャに業務を委ね、これらの課題に集中的に取り組むことにしました。

情報伝達の改善

私は課長として携わりましたが、私を挟んで部長とマネージャ間での情報伝達が不十分でした。
そこでまず、部長がどのような目標を設定しているのか、そしてQA課に何を期待しているのかを明確にしました。
その情報をマネージャが理解できる形で共有します。
これまで、現場が求められていることも分からず、ただ目の前の仕事をこなすだけだった状況を改善しました。

さらに、課の現状やプロジェクト内でのQAの進捗を可視化しました。
これにより、何が達成されているのか、何が改善されるべきなのか、そして何に支援が必要なのかを部長に定期的に報告する体制を整えました。
この時、現場のマネージャからも報告を行ってもらうことで、次期課長候補がどういう人物なのか、部長も判断できるようにしました。

人手不足の対策

当時のマネージャたちは非常に忙しく、現場作業や会社の指示に追われ、長期的な視野を持つ余裕がありませんでした。
私が現場に直接関与できない分、マネージャが現場のマネジメントに専念できるよう、非業務関連のタスクは全て私が引き受けました。

どうしたらマネージャたちのパフォーマンスを最大にできるのかを考え、それに必要な情報や予算、リソースなどを集めて与えました。
私の知識と経験は現場に関与するためではなく、マネージャをサポートするために使いました。

徐々に彼らが余裕を持てるようになると、現場のフォロー、改善、そして長期的な計画も進行し始め、組織全体がスムーズに動き始めました。
人員も増加し始め、トラブルが減少し、組織全体の改善も進んでいきました。

このような環境が整った結果、メンバーも自然と成長しました。
約1年半の関与で、組織を再構築し、テストの自動化なども進め、次の課長候補も育成できたことで、私は楽天を退職し次のステップに進めたのです。

マネジメントの実践的な学び

QA課での経験を通じて、以下のようなマネジメント手法を学びました。

部署の目標設定と役割分担

会社に所属し、給与を受け取る以上、会社の利益に貢献することは当然です。
そのため、上司と共に部署の目標と役割を明確にし、それをどのように達成するかを計画することから始めます。
この目標と役割を自分自身の言葉で部下に説明できるようになるまで理解します。
ただ、完璧である必要はありません。
部下の伝えた際に不明点が見つかれば、再確認すれば良いのです。

次に、部下に対して部署の目標と方針を明示します。
上司との目標設定と同じように、各部下に具体的な役割と目標を設定します。
それぞれの部下がもたらす成果の集積で、部署の目標が満たされるようにしましょう。

この時、部下のスキルが高ければ細かい指示は必要ありません。
しかし、そうでなければ、目標達成までの具体的なマイルストーンを部下と一緒に作成することも必要です。

部下のパフォーマンスの最大化

目標と役割について共通の認識ができたら、次は部下のパフォーマンスを最大化するためのサポートを提供します。
部下が最高のパフォーマンスを発揮できるように、必要なリソースを提供するのが私たちの主な仕事です。
情報、予算、上司の承認など、必要なものを集め、部下の活動を支援しましょう。

重要なのは、部下に対して細かい指示を出すのではなく、必要なリソースを提供して自主性を促すことです。
これは短期的には成果が出にくいかもしれませんが、長期的には部下の成長と部署の成功につながります。
目の前の成果だけを追い求めず、時間がかかるからこそ早めにコツコツと育てていく必要があるのです。

このマネジメント手法で個性を出せる部分は、私たちの知識と経験を活用したサポートになります。
自分と上司と部下の三者で、成果を共創していくことが、この手法の醍醐味と言えるでしょう。


以上で紹介したマネジメント手法は、一見当たり前のように思えるかもしれません。
多くの方が「そんなことは知っている」と感じるかもしれません。
しかし、実際には「時間がない」という理由で実践していない方が多いのではないでしょうか。

私自身も、現場の専門知識が不足している状況だからこそ実践できました。
他の選択肢がなかったからです。
そしてその結果、わずか1年半で組織を安定させ、部下を成長させ、部署の引き継ぎまで成功させることができました。

もちろん、部下のスキルレベルも影響しているでしょう。
しかし、どんな組織であっても、今後はこの手法を採用するつもりです。
それは、このアプローチが組織を自立させ、上司に依存しない健全な状態に導くからです。

もし、あなたのマネジメントスキル向上に役立つ要素が少しでもあれば最幸です。

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