おはようございます。Life Quest Allianceの福永です。
「この新商品を何としても売りたい」
「あの新規事業を早く軌道に乗せたい」
日々、多くの経営者やマネジメント層の方々と対話する中で、このような熱い言葉を何度も耳にします。
口ではそう言っているし、頭でも心でも、本当にそう願っている。
しかし、ふと我に返ったとき、何週間も、あるいは何ヶ月もの間、具体的な行動がまったく変わっていない自分に気づき、愕然としたことはないでしょうか。
もし、目の前で「あなたは本当にその売上を上げたいと思っていますか?」とストレートに聞かれたら、どう答えるでしょうか。
おそらく「当然だ、そのために毎日こんなに忙しく働いているんだ」と答えるでしょう。
しかし、なかなか現状が変わらないと嘆く経営者の方たちの話をよく聴くと、ある事実が見えてきます。
それは、忙しさを言い訳にして、1日のうちでその新商品や新規事業について考え、実際に手を動かしている時間は、実はわずかしかないということです。
本気で、ある成果を出したい、例えば本気でその売上を上げたいと望むなら、仕事の時間、場合によっては生活のすべてを「その商品を売ること」に注ぎ込むほどの集中が、少なくとも初速では必要なはずです。
それにもかかわらず、多くのリーダーが「売上を作りたい」と願いながら、日常の雑務や目の前の火消し対応など、別のことに大半の時間を費やしてしまっています。
ただ、ここで勘違いしないでいただきたいのは、このように「動けない」理由が、決してリーダーの「やる気」や「能力」が足りないからではないということです。
売上目標だけでは動けない|意志の力に頼らない原点回帰の問いかけ
人が新しい行動を起こせない背景には、脳の仕組みと心理学的なトラップが潜んでいます。
まず知っていただきたいのが、脳のフィルター機能である「RAS(網様体賦活系)」の働きです。
RASは、自分にとって「重要度の高い情報」だけを毎秒膨大な情報の中から拾い上げるフィルターです。
口では「売りたい」と言っていても、心の奥底での本気度が低いと、脳はその優先度を下げてしまいます。
その結果、売るための画期的なアイデアや、目の前に現れたビジネスチャンスがあっても、脳が不要なものとして「スルー」してしまうのです。
さらに、強力に働くのが「現状維持バイアス」という脳の防衛本能です。
人間にとって、新しい行動を起こすことは多大な脳のエネルギー(糖質)を消費します。
本気度が不十分だと、脳はエネルギー消費を嫌い、「明日やろう」「今は別の仕事を優先しよう」と言い訳を作り出し、最も楽で安全な「現状維持」を選択します。
厳しいようですが、「行動していない(時間を割いていない)」という客観的な事実は、脳科学的には「あなたの脳が、それを重要ではないと判断している証拠」なのです。
この脳の仕組みに加え、経営者やリーダーが気づかぬうちに踏み込んでいる「3つのブレーキ」が存在します。
1. 失敗への恐怖(自己防衛)
「本気で取り組んで、もし売れなかったらどうしよう」という恐怖です。
全力を尽くして失敗すると、その商品だけでなく、自分の経営センスや存在自体を否定されたような痛みを伴います。
そのため、「忙しくて全力が出せなかった」と言い訳ができる状態を、無意識のうちに作り出して自分を守っているのです。
2. 手段の迷子(具体性の不足)
「やりたい」という大まかな意欲はあっても、「今日、具体的に何をすればいいのか」という最初の一歩が細分化されていないと、脳はすぐに思考停止します。
そして、やり方がすでに分かっているルーティン業務や慣れ親しんだ雑務へと逃げてしまいます。
3. 二次的利得(現状のメリット)
心理学において、望ましくない現状を維持することで得ている「隠れたメリット」を二次的利得と呼びます。
「売れない(今の規模の)まま」でいれば、これ以上忙しくならず、プライベートの時間が確保でき、新しい責任を背負わずに済みます。
この「現状の居心地の良さ」を失いたくないという無意識の抵抗が、行動を阻みます。
もし、ご自身や組織がこのブレーキを踏んでいると感じたら、一度原点に立ち返ってみることを強くお勧めします。
そもそも、「なぜ、あなたはこの商品を売りたいのでしょうか?」
実は、ライバル企業への対抗意識でもない限り、「今期の売上目標◯千万円」という単なる数字の羅列だけで、人の心は本質的には動きません。
「なぜ、この商品を作ったのか?」「この商品を通じて、お客様の生活をどう豊かに変えたいのか?」
そして、「それを達成したとき、自分自身や社員はどんな感情や未来を手に入れられるのか?」
この「Why(なぜやるのか)」を徹底的に掘り下げ、情熱を再点火させることがすべての始まりです。
Whyが明確になったら、次は脳のブレーキを外すために「アイデアの超多量出し」を行います。
その商品を含め、何を社会に提供すればWhyが実現できるかを、最低でも100個書き出してみてください。
このプロセスのポイントは、「実現可能性やコスト、時間を一切考えないこと」です。
「1億円かかるアイデア」でも「実現に10年かかる方法」でも構いません。
ここに「できる・できない」の制限をかけてしまうと、現状維持バイアスが働き、脳は新しいアイデアを瞬時に握りつぶしてしまいます。
後で「これは今は無理」と外せばいいだけです。
100個ほどのアイデアが机の上に並ぶと、脳のフィルター(RAS)が急速に書き換わり始めます。
その山の中から、まずはあなた自身が心から「ワクワクするもの」を選んでみてください。
そして、社員にも「これなら自分にもできそう」「面白そう」と思うものを選んでもらうのです。
才能は社員それぞれです。
自分なら自然にできてしまうこと、楽しんでやれることを選んでもらいましょう。
人は「できそうだ」と思えれば、進むべき道筋も自ずと見えてきます。
道筋が見えたら、あとは実行あるのみです。
ここで重要になるのが、「仕組み化」の視点です。
意志の力だけに頼って「空いた時間にやろう」と考えてはいけません。
拙著の第6章でもお伝えしているように、1日のスケジュールの中で、その実行のための時間を「あらかじめカレンダーに予約」し、仕組みとして時間を先取りしてください。
農業において、どんなに豊かな土地があっても、放っておいて勝手に素晴らしい作物が収穫できることはありません。
土を耕し、種を蒔き、毎日水をやるという「具体的な行動」を継続するからこそ、豊かな実りがもたらされます。
それはビジネスも変わりません。
「自分が本当にワクワクできる商品で、お客様と社会を豊かにする」
日々の忙しさから一歩身を引き、この原点に一度立ち返ってみることも、行動をブーストするには必要なことなのです。
何かに行き詰まっているようであれば、まずは脳のブレーキを解除することから始めてみましょう。
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